ドル人民元相場がじわじわと元高に進んでいます。
今年5月9日に1ドル=6.9057元を付けた後、じわじわと元高が進み、6月9日現在1ドル=6.80元と1.5%元高となっています。
人民元については中国外為規制当局が厳格に管理しており、現在の元高は明らかに中国金融当局の意図のもと実施されているものと考えられます。
最近中国人民銀行は新たな人民元設定基準を導入したとのこと。方向性としては「元高誘導」のようです。
推定として、FRBの利上げに伴いドル高となる動きを牽制する狙いがありそうです。(つまりFRBの利上げに伴い中国国内からマネーが流出しないよう、なにがなんでも止める決意をしたようです。)
まずドル安人民元高となっている原因として、中国がものすごい勢いで人民元買いドル売りを行っているのか、あるいは為替市場に「元が不足」しているのかのいずれかが考えられます。
ドル売りについて、中国はこれまで貯め込んでいた米国債を1兆ドルも売り込んでおり、外貨準備も2兆ドルを切るレベルまで下がっていましたが、最近は外貨準備高が下げ止まり、微増に転じたようです。
参考
米財務省・FRBの統計では、2017/1-4の間、中国は米国債を411億ドル(約4.5兆円)買い増していた。
これらの問題に対して、共産党政権への信頼をつなぎ止めるため、中国政府は国民の資産保全と雇用の維持を目的に、ゾンビ企業に資金をジャブジャブと供給し、バランスシートに乗らない理財商品には目をつぶり、理財商品がデフォルトしそうな商業銀行も地方政府がてこいれし、とにかく現状の経済状況を維持しようと最大限努力して来ました。
しかしもはや限界。さすがの中国政府も資金供給を絞らざるを得なくなったようです。
The Wall Street Journal 2017/5/2付「中国の融資減速、世界の成長脅かす恐れ」より。
「中国は過剰債務を抱える金融システムを再び抑え込もうとしているが、信用の伸びがすでに減速しつつある中、これが経済成長を妨げる恐れがある。」
「海外の投資家は気にしていないようだが、注意すべきだ。」
「2015年や16年初めのように中国が再び世界の金融市場を震撼(しんかん)させることは恐らくないだろうが、それでも影響は世界中に広がるだろう。」
The Wall Street Journal. 2017/5/12付「中国の国債市場、ストレス増加の兆し」より。
「5月11日午前、中国の5年物国債の利回りは3.71%に上昇し、25カ月高値に近い水準にあった10年物国債の利回り3.68%を上回った。」(いわゆる逆イールド状態)
「どうやら原因は、主に理財商品の販売で急成長してきた「影の銀行(シャドーバンキング)」を抑制しようとする中国政府の最近の取り組みにあるようだ。」
「理財商品に対する取り締まりを受けて、発行元の多くは投資家に返金するためにポートフォリオの一部として保有していた国債の売却を促されてきた。こうした売却は広範にわたってきたが、投資家は10年物よりも流動性が低い5年物を先に売却してきた。」
と書いています。
一方原油価格については、OPECの減産合意やサウジなどの中東4ヶ国がカタールと国交を断絶した(地政学的リスクの増大)にもかかわらず、6月5日の米WTI原油先物価格は1バレル=47.4ドルまで下落しています。
この原因として、供給側ではなく需要側、特に中国の石油備蓄のための需要が減退したことと、中国当局の金融引き締めが主因と言われています。
この金融引き締めにより市場に人民元が不足し、6月1日、オフショア人民元のオーバーナイトの金利が43%に急上昇しています。
こうした中国金融当局の動きについて、中国国内も国外投資家も習近平が今の時期に国内経済を混乱させることはしないだろうと高をくくっているようですがどうでしょう。
中国は日本のバブル崩壊を徹底的に研究し、万全の対策を立てているそうですが、はたしてソフトランディングできるのかどうか・・・
じっくり見させて頂きます。
投資や家計全般のご相談についてはこちらをご覧ください。