2017年1月16日月曜日

FX投資家のための為替講座(その2)



日米金利差が為替に与える影響

日米金利差とは、それぞれの長期金利(10年債の利回り)の差です。

現在、日本の10年債の利回りは0.043%、米国の10年債の利回りは2.36%ですから、その差は2.317%になります。

さてあなたは0.043%の定期預金と、2.36%の定期預金のどちらを選びますか。

ちなみに100万円を預金すると、0.043%の定期預金では10年後の利子が4,300円、2.36%の定期預金では利子が262,700円になります。

たぶん欲の深い貴方は2.36%の定期預金を選ぶはずです。

この金利差は現実のものですから、賢い日本国民すべてが米ドルの定期預金に殺到することでしょう。

でも、とある銀行に聞いたら「そんなことはない!」と言っていました。

そこで日本国内の利回りの現状を見てみると。

一例としてみずほ銀行は、円の定期預金金利が0.01%(つまり0.033%は銀行の儲け)、米ドルの定期預金金利(1年)は0.55%となっています。

注意
みずほ銀行の場合、為替手数料が1ドル0.4円、往復で0.8円(0.7%)となりますから、1年間だけで見ると利回り0.55%では為替手数料0.7%に負けてしまい損になります。

したがって現状としては銀行ばかりが儲かるようにできているので、為替リスクを取って外貨に預金する人などほとんどいないのです。

参考
とは言うものの、外貨建ての終身保険などが売れていますから、高金利通貨が魅力的であることは確かなのです。

一方GPIFなどの機関投資家は僅かな手数料で米国債を買えるので、近年は数兆円規模でどんどん買っています。 私の感想・・・極めて頼もしく思っています\(^o^)/

参考
GPIFの2四半期運用報告書より、2016年10月末の債券利回りは1.83%となっています。(デュレーション(平均残存年数)が2.8年と短いので10年債利回りよりも低くなっています。)

閑話休題
GPIFは平成27年度に巨額の赤字を出したためマスコミから袋だたきに遭いましたが、次のグラフが示すように、平成24年に運用方針を変更(株式及び外貨への配分比率拡大)して以降、赤い折れ線グラフ(累積収益額)は急上昇しており、この成果には目を見張るものがあります。平成24年度以降の累積収益額は約29兆円に達し、この間の平均リターンは6.8%もあるのです。(マスコミはどうしてこのような成果を書かないのでしょう?)



上記の例のように米国金利が上昇し、日本の金利が低下すると米ドルを買いたい人(個人、企業、機関投資家など)がどんどん出てきます。

つまり日米金利差が広がると、円を売って米ドルに交換する人が多くなるので、ドル高円安になります。

ちなみに黒田日銀総裁も「一般論として、金融引き締め方向(金利が高め)にある国の通貨は買われ、緩和方向(低金利)にある国の通貨は売られる」と発言しています。

日銀の仕事は金融政策であり、金融政策の根幹は「金利操作」ですからファンダメンタルズの基本の「き」は金利なのです。

さて、11月9日トランプ氏が選挙戦に勝利し、FRB(米国中央銀行)の利上げがほぼ確実視されたころより12月にかけて米国長期金利が1.8%から2.5%に急上昇、同時に為替も105円から118円とドル高円安になっています。グラフ参照


この期間の金利差と為替の相関を取ると0.96であり、為替と金利差がピッタリと連動して動いている状況と言えます。

つまり教科書どおりの動き方となり、為替は本来の水準に戻って来ています。

一方このグラフから金利差が縮小している期間に円安となった時期もあるので、いつでも金利差と為替が連動している訳ではありません。

そこで平成25年から28年にかけて金利差と為替の相関を取り、グラフに示してみました。

注意
相関は2ヶ月を単位として算出し折れ線グラフにしています。



黒の折れ線が「相関」を示しており、左目盛りの-1.0から1.0(赤い線)の間を推移しています。(1.0の赤線に近くなるほど連動性が強くなります。)

このグラフより、私の見方は日米金利差があまりない時期(2%以下)では為替への影響が弱く、金利差が2%を超えて開いて来るとその連動性が強まるようです。

例として次の期間は金利差が広がるとともに相関も1.0に近づき、金利差と為替の連動性が強まっています。(相関を示す黒の折れ線グラフのオレンジ色の部分)

2016/11-12  金利差2.41 相関0.96
2016/9-10   金利差1.89 相関0.82
2014/1-2   金利差2.07 相関0.86
2013/11-12  金利差2.25 相関0.82
2013/9-10   金利差1.97 相関0.78


さてこの先どうなるのか皆さんは知りたいのでしょうが・・・私にも分かりませんm(_ _)m

とは言うものの、川島FPのいい加減予想としては、米国経済は堅調かつ完全雇用状態にあり、FRBも今年2、3回は利上げしそうですから、日米金利差がますます広がるとすると、長期的な趨勢はやっぱり円安でしょう。

ただしチャイナリスク(超円高のリスク)もあるので気を付けましょう。







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