2011年10月10日月曜日

イールドカーブで分かる各国国債の特徴



(グラフはクリックすると拡大します。)

債券の利回り曲線を「イールドカーブ」と呼びます。

横軸が債券の残存期間、縦軸が利回り(%)となっています。

銀行預金などと同様、期間が長期となるほど利回り(金利)が上がります。

期間が長いとなぜ金利が上がるのでしょう?

これはその間のインフレリスクを織り込むためです。

一般にお金の運用では、期間が長期になるほどリスク(価格の上下の変動)が大きくなります。

金利については、下がることも上がることも同様の確率で起こります。

債券の投資家としては利回りの低下は債券価格の上昇となるので好ましいのですが、利回りの上昇は債券価格が下がってしまうので、このリスクは避けたいと考えます。

したがって、残存期間が長期の債券では将来の利回りの上昇を織り込むためイールドカーブは右上がりとなります。

右上がりの傾斜は、そのときどきの状況によりスティープ化(急勾配化)したり、フラット化(なだらかな傾斜)したり、またはまれに逆イールド(下り坂)となったりします。

上のグラフは各国の国債のイールドカーブを示しています。

その国の状況により発行されていない期間のものもありますが、グラフはその期間も補完し、連続させて書いています。

最初にドイツを見てみると、ほぼ直線的に右上がりの傾向を示しています。
(点線は傾斜を見るための補助線です。)

正しいイールドカーブというものがあるのかどうか知りませんが、他の国を比較するのにこの特徴のないドイツのイールドカーブを基準として考えることにします。

米国国債は、長期ではドイツと同様のレベルと傾斜角となっていますが、短期ではスティープ化しています。

2008年のリーマンショック以来、FF金利が5.25%から0.25%に低下するとともに短期の債券利回りは急低下(価格は上昇)したままとなっています。

一方長期債の利回りは大きくは低下していないため、FRBでは今回「ツイストオペ」により短期債券を売却(価格の低下と利回り上昇)するとともに長期債の購入(価格の上昇と利回りの低下)を行いイールドカーブのフラット化を図っています。

オーストラリアについては、短期債券で逆イールドとなっています。

3年ものの利回りが3.6%、1年ものの利回りが4.15%と高くなっています。

期間10年でも4.25%ですから、1年もので4.15%とは驚きです。

つまりオーストラリア国債に投資するなら短期がお得なのです。
(日本国内で扱われているオーストラリアの債券はAAAの社債なども含まれていますから必ずしも短期がお得と言うわけではありません。)

なぜオーストラリア国債では逆イールドとなっているのでしょうか?

一般的に、金利は運用期間が長期になるほどインフレリスクを織り込みスティープ化しますが、逆イールドは市場が将来の経済減速(金利低下)を織り込んでいると考えられます。

グラフからもオーストラリア国債のイールドカーブは米・独と比較しフラット化しており、ほぼ日本と同じ勾配となっています。

中国経済の減速、そして世界経済の減速に伴い「資源需要の低迷」を見ているのかも知れません。

一方短期金利は政策的に動かせるのでオーストラリア政府の金利政策で逆イールドとなっているとも考えられます。


さて、我が国の国債についてです。

これ以上ないほどの「低空飛行」状態です。

10年もので1%(以下)とは信じられないほどの超低金利にあきれてしまいます。

フラット化も極まった状態と言えます。

でも注目は10年超の期間でスティープ化していることです。

これは銀行などが「日本のソブリンリスク」を懸念し長期物を「売り」、短期に乗り換えしているためです。

つまりFRBの「ツイストオペ」の逆を実行しているのです。

日本国債の「X day」は近いのかも知れません。


イールドカーブの現状


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