2016年12月26日月曜日

中国経済はリスクの塊だ!



中国経済の現状について関連するニュース記事を元に分析してみました。

中国元の為替レートの推移状況は次のグラフのとおりです。


グラフの3本線のうち2本は、中国元及び円の対ドルレートを2013年初めの値を100%としてその後の推移状況を示しています。

円レート(USD/JPY:青色)がアベノミクスにより大きく上下しているのに比べ、元レート(USD/CNY:オレンジ色)はドルにペッグされているため、ほぼ100%のレベルで推移していますが、2015年8月以来「元安」傾向となっています。

折れ線のもう一本のUSD/CNY(右目盛り:赤色)は、中国元の対ドルレートの値をそのまま示しており、右目盛りで読みます。

ドルペッグ(固定相場制)については誤解があるようですが、自国通貨を米ドルにペッグするためには極めて強力(大規模)な為替介入が必要であり、中国は元安を防ぐためにドル売り-元買いを常に行っています。

ちなみに2016年12月12日までの集計で、中国企業のM&Aによる米ドル投資額(元売り-ドル買い)が539億ドル(約6.3兆円)ですから、中国政府はこれを遙かに上回る金額で米ドル売り-元買いを行わないと為替レートを維持出来なくなります。

The Wall Street Journalによると、この10月だけで中国政府は410億ドル(4.8兆円)の米国債を売っており、ついに世界一の米国債保有国から転落した結果「日本は中国を抜いて世界最大の米国債保有国に返り咲いた」と記しています。

同じくThe Wall Street Journalより、2015年末以降、中国から1兆ドルを超える資金が流出したとも記しています(元売り-ドル買い)。

つまり中国政府は人民元を買い支えるためは1兆ドルを遙かに超える金額でドル売り-元買いを行ったと考えられます。

今のところ1ドル=6.95元が底値のようですが、グラフから見える未来は1ドル=7元を突破するのも時間の問題のようです。(瞬間風速としては12月6日に7.48元となっています。)

12月22日ロイターによると「中国外為規制当局者は22日、中国による米国債保有の減少は戦略的な削減ではなく、市場の状況に応じた限定的な調整との認識を示した。」とのこと。

対米関係に気を使っているようですが、背に腹は替えられず、中国経済を支えるためには貯め込んだ米国債を乱売するしか方法はなく、まだ外貨準備は3兆ドルもあると見栄をきっていますが、張り子のトラの3兆ドルがいつまで持つのか・・・

したがって中国の国民も企業も将来の元暴落を見込み、ドルやビットコインをせっせと買っています。

参考
12月22日ロイター 「仮想通貨ビットコインの時価総額が22日、140億ドルを超え、過去最高を記録。取引の大半は中国で行われており、専門家の間では、人民元安を背景にビットコインが買われているとの見方が多い。」

一方中国国内では、債券市場が崩落。

12月21日付日本経済新聞によると、「中国の金融資本市場でまた一つバブルがはじけた。中国の国債相場が足元で急落に転じている。」と記しています。

債券相場の急落に伴い、証券会社の元従業員による不正取引で巨額損失(約170億円)が表面化。

同様の不正は「中国の証券業界ではかなりよく聞く手法」(日系証券の調査担当者)だったとのことで不安の連鎖が発生しています。

債券市場が崩落した背景には、中国政府の旗振りのもと債券市場は絶対儲かるという都市伝説が流布され、株価暴落で痛い目を見た投資家が我も我もと債券市場に押し寄せた結果のようにも見えます。

下がるはずのない債券市場が下がったのですから大パニック。市場では中国の国債に売りが殺到。10年債利回りは16日に3.4%超と1年4カ月ぶりの水準に上昇(価格は下落)した。(21日日経新聞)

2015年7月の上海市場株価の暴落もそうですが、中国政府頼みの市場が不安に駆られると暴落を繰り返す、なんとも危うく懲りない政府と投資家たちのようです。

さて2017年の中国経済はどこへ行くのでしょう。

英エコノミスト誌2016年5月7日号”中国の金融システム:迫り来る債務の山の崩落”の中で、「正真正銘のトラブルが中国を襲うのは、可能性の問題ではなく、時間の問題だ。」と断じています。

9月のBloombergでは、「CLSAの推計では、信託会社が関係するローン商品や銀行のウェルスマネジメント商品、証券・保険・投資信託会社が販売する資産運用プランを含むシャドーファイナンシングは、2011年から15年までに年30%のペースで拡大し、中国の国内総生産(GDP)の79%に相当する54兆元規模に達した。」これは銀行などがオフバランスとして売っているいわゆる理財商品のことです。

2016年10月27日豊島逸夫氏ブログより”理財商品、中国の銀行がかかえる時限爆弾”
「中国当局もジレンマをかかえる。規制を強めれば、目先の経済成長には阻害要因となるからだ。既に、不動産ローンや地方政府プロジェクトへの融資への規制強化は進行中である。中国債務問題の綱渡りは続く。」つまり当局は、オフバランスされた理財商品をバランスシートに載せるよう指導を強化したいが、正直にこれを実施されると銀行の信用不安を拡大させてしまう恐怖があるということです。

10月20日The Wall Street Journal”中国成長の資金源、枯渇する可能性も”
「消費者が経済の安定を支え続けているのかもしれないが、その消費者の頼みの綱である借り入れの状況はどんどん恐ろしいものになっている。」中国政府からの資金供給が絞られています。

10月11日香港ロイターは”中国主要都市で相次ぐ規制強化、冷え込む住宅市場”
「買い手や不動産開発会社の間で警戒感が高まり、物件の値下がりや販売不振が起きている。」不動産市場の暴落も怖いので、モグラ叩き的に規制強化が進められています。

12月20日The Wall Street Journal”中国の住宅市場に忍び寄る破裂音”
「中国では債券市場の破裂音が鳴り響く中、新たに発表された住宅データにはさらに悪いニュースが含まれていた。」「中国の住宅市場が、現在あるいはかなり近い将来にピークを迎えることは間違いない。」これまでずっとオオカミ少年だった中国の住宅バブル崩壊説もやっと現実に・・・なるのかな?

12月14日付英フィナンシャル・タイムズ紙”習近平主席の改革が成功し得ない理由”
「腐敗とは、一党制国家と市場の結婚によって生まれる産物だ。」「腐敗が富の急増を妨げることはなかった。それどころか、経済成長と腐敗は足並みをそろえて伸びてきた。」「共産党の役人たちが、自国の政府から貴重な資産(土地、鉱物資源など)を没収し、勝手に自分の懐に入れてしまったのだ。」「レーニン主義の規律の回復と市場の自由化を統合しようという習氏の取り組みがうまくいかないことが判明したら、習氏の体制はこれまで以上に深刻な危機に直面することになる。」つまり腐敗撲滅=改革開放政策の放棄ということなのです。

12月20日Forbes Japan”中国の対米投資額 過去最高で警戒感”
「中国の対米投資額は昨年から359%の上昇となり、史上最高額に達した。」「中国当局も国外への資金流出に神経を尖らせ始めた。11月に中国国務院は国営企業による海外投資に対する監視を強めると宣言した。」いくら中国政府がドル売りで為替レートを維持しようとしても、足下でキャピタルフライトされては意味ないじゃんということか。

12月22日The Wall Street Journal”国債急落で警告 中国にドル高の試練”
「中国の国債市場では15日、利回りの急騰(価格の急落)を受けて先物取引が一時停止された。」「FRBがこの先も見通し通りに利上げを遂行すれば、人民銀行は金利を低く維持できなくなることを投資家は理解しているようだ。」「企業は資本統制を巧みに回避し、資金を海外に持ち出してドルに転換する。」「ドル高が進む中、中国の金融機関と実体経済は試練にさらされることになる。」2017年もドルは上がると専門家は見ています。中国政府は歯を食いしばってドル高について行こうとするのでしょうが・・・もうムリです。

蓄えたドル資産が尽きた頃合いを衝いてヘッジファンドは「元」売りを仕掛けると言われています。

参考
ダボス会議でのジョージソロス氏(ポンド売りでイングランド銀行に勝った投資家)の発言
「2008年の金融危機はサブプライムが問題だったが、今回の波乱の原因は中国だ。特に膨大な債務がリスク。ハードランディングは不可避。但し、中国は、経済政策・外貨準備などで危機管理が可能だ。問題は、中国波乱が他国へ及ぼすデフレ効果である。」

中国経済は明らかに危機なのですから軍拡なんかしている場合ではないのですが、残念ながら経済が分かっている共産党員はいないようです。(と言うより腐敗取り締まりの中、官僚たちは"なにもしない"ことで保身をはかっているのです。)


さていろいろな記事をパクリましたが、株もダメ、債券もダメ、不動産もダメ、当然理財商品なんかとんでもないということなので、結論として綱渡り状態の中国経済、このままで2017年が無事に過ぎることはないように思われます。

昨年の12月にそんなことを書いていた経済新聞がありましたが、2016年は無事に過ぎようとしています。

さすがに中国はしぶとい!


・・・でもね2017年中に中国政府の蓄えが尽きてしまったら・・・

お手並み拝見です。


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