2011年4月21日木曜日

機関投資家のポートフォリオ(その2)

機関投資家のポートフォリオについて私が独断と偏見で評価させていただきます。

データは各機関のHPから入手させていただきました。

利回りについては、GPIF及び企業年金連合は公明正大でしたが、明治安田生命では損益が(時価-簿価)の計算により評価され記載されていたため、素直に読むとこの期間の利回りが10~20%にもなり、眉につばを付けたくなるような信じられないリターンとなっていました。

その理由として明治安田生命では「売買目的有価証券以外の有価証券」と考えているためのようです。

つまり売るつもりのない有価証券については、キャピタルゲインは無視し、インカムゲインだけが経営においては重要と考えているようです。
実態も損益の主体は配当金となっています。

ですから投稿(その1)の図に示した明治安田生命の利回りは、損益計算書の資産運用収益から貸付金利息などを除いた配当金等から計算したものです。

配当金ですから明治安田生命の利回りは、毎年度3%前後で安定しています。
この考え方は、株式投資が儲からない今の時期としては「けっこう賢い投資法!」と言えるかも知れませんね。


では本題のポートフォリオの評価です。

GPIFはリーマンショック以降国内債券の比率を引き上げています。
設定値は67%ですが、現在は75%にも達しています。

為替変動や経済状況などのリスクを回避する姿勢が極めて鮮明に出ています。
要は日本国債の利回りで十分と考えているようです。

ですから5年間の成績は2勝3敗となり明治安田や企業年金に負けてしまっています。
ひがみではありませんが、そんな運用なら私でもできますと言いたいところです。

でもGPIFの運用資産120兆には私が数年後にもらう予定の年金がまさに塵のごとくに含まれていますから、他人事ではなく切実にGPIFに申し入れたいのですが、「国債買うなら日本国債ではなく米国国債にしてくれ~!」。

格下げされたとは言え腐っても鯛、利回り、信用性、流動性から言って日本国債は米国国債には勝てません。

いささか個人的評価に傾きすぎました。
次に明治安田生命です。

こちらも国内株式に見切りをつけて、ひたすら「債券」に資産をつぎ込んでいます。
外国債券が少し伸びていますが、その分外国株式を減らし、為替リスクを増やさないよう配慮しています。

いま全保険会社では、自己資本比率やソルベンシーマージンの厳格化に伴い、リスク資産の圧縮に努力しています。

その基本的な考え方はALM(Asset Liability Management)(資産と負債を一体として管理するリスク管理手法)に基づいています。

ALMの負債サイドとなる保険契約では予定利率に基づき比較的長期にわたり保険金の支払いがほぼ確定してしまうため、資金運用サイドのキャッシュフローのデュレーションも保険契約に対応した(変動の少ない)長期運用の資産とする動機付けが働きます。

他方、保険会社では保険契約(負債サイド)の短期化を図ろうとするため、終身保険などの超長期固定の契約を避け、○○アカウントとか○○ファンドとかわけの分からない主契約(実態は10年の定期保険)を必死で売っているのです。

蛇足ついでに、ALMを導入したそもそもはいわゆる「逆ざや」(運用利回りが予定利率を下回っている状態)を防止することにあります。


機関投資家が以上のような状況ですから、国内株式については、当面巨額な流出が続くと考えられ、結果としてここ数年はマクロ的に見て株価は上がりようがないと思われます。
(ただし円安を契機に、外国人投資家が本格参入した場合はチョット期待が持てるかも知れません。)

明治安田生命の利回りは5連勝ですが、冒頭に記したとおり積極的に評価できる内容ではありません。
(いわゆる株主優待ねらいのせこい運用に見えますので・・・プロがやる仕事ではないというのが私の印象です。)


最後は企業年金連合の評価です。

このポートフォリオを見ていると、GPIFなんかにくらべ「ファイティングポーズ」をとっているイメージが沸きます。

「もうけたるゾ~!!」という運用者の姿勢が感じられていいですね。
きわめて真剣に仕事をしている雰囲気があります。

ですから成績は凸凹となり、大きく儲けて大きく損しています。

企業年金連合も国内株式に見切りを付けたようです。
割合を35.3%から17.1%まで半減させています。

代わりに外国債券を6.1%から20.2%まで3倍に引き上げています。
外国株式は22%前後と変化させていませんから、積極的に為替リスクを取りに行っています。

この5年間で企業年金連合は外貨建資産を28%から46%まで増やしています。
私の評価では◎(二重丸)です。

利回りは3勝2敗。
リスクが大きいけれどなんとなく応援したくなるポートフォリオです。

さてあなたはどのポートフォリオが好きですか?

機関投資家のポートフォリオ(その1)


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